Island Eye Island Ear
日付:
1974年12月3日
内容説明:
「Island Eye Island Ear」を🏝クナーヴェルシェア島にて1975年7月に10日間開催することを目指して作成されたプロポーザル。1974年7月に実施された島の調査後に作成された。
資料保管場所:
#Klüver/Martin_Archive
#Getty_Research_Institute
資料制作者:
#Experiments_in_Art_and_Technology_(E.A.T.)
翻訳:
Ⅰ. DESCRIPTION 概要
IEIEは、アーティストたちを集め、テクノロジーを使ってクナーヴェルシェア島の自然=本性(nature)を露わにする。この島の視覚的特性、音響的特性、そして物理的特性にフォーカスし、それらの特性を拡大していく。用いられるテクノロジーや活動は、島にすでに存在している自然の要素を際立たせたり、可視化したりするための鏡ないしはガイドとして導入される。それぞれのアーティストが持ち込む要素(input)は、島の環境を探求する特別な方法を来訪者たちに提供する。
Ⅱ. INPUTS 構成要素
デーヴィッド・チュードアは、さまざまな季節に録音された島生来の音素材を島内に張り巡らせる。直径1メートルから3メートルの[パラボリック]アンテナを複数用いて、スピーカー用ドライバーを取り付けた2台のアンテナを向かい合わせる「サウンド・ビーム」を8本、同じくドライバー付きの1台のアンテナが岩や丘、渓谷やその他の自然に存在するリフレクターに向けて音を放つ「サウンド・スロー」を14本、制作する。島内を歩き回る来訪者たちは、さまざまな音の混在を耳にする一方で、ある場所ではサウンド・ビームを通過したり、音のリフレクションと出会うことによって、特定の音がはっきりと聞こえてくるだろう。
中谷芙二子は、岩崖から松林まで特性の異なる9つのエリアで、水蒸気の雲または霧を作り出す。それぞれのエリアは霧が島の風、光、そして地形と相互作用する多様な仕方をうまく利用することを念頭に選ばれた。来訪者たちは霧のなかを歩いたり、あるいは雲のエリアの形状、動きと持続を風と天気が刻々と変えていく様を遠くから観察したりすることができる。
ジャックリーヌ・モニエの凧は、霧と相互作用しながら、島固有の風況と光と色の特性を可視化する。
マーガレッタ・アスバーグは、吊るし鏡、立て鏡、立体鏡のみならず、手鏡、望遠鏡、拡大鏡や自然の彫刻を用いて、訪問者の観察を導いていく。パフォーマーは、特定のエリアにおける地形やその他の特性によって示唆される局所的な活動に訪問者たちが参加するように促す。
Ⅲ. DESCRIPTION OF KNAVELSKÄR クナーヴェルシェア島について
クナーヴェルシェア島は、北緯59,8°、西経8,38°に位置する、スウェーデン群島のひとつである。本土ダラーロからタクシー船で45分、ストックホルムから船で4時間でたどり着くことができる。長さ800m、平均的な幅100mの地形だが、最大部分の幅は200mあり、面積は100,000㎡よりもやや小さい。最高標高は「トップヒル」における18mである。様々な高さのでこぼこした花こう岩層が、この島を形成した氷河活動の痕跡を示している。東側で海に面するのは険しい絶壁だが、西側には2つのビーチがあり、海抜ゼロ地点の平坦なエリアもいくつかある。島を囲む水深は36〜77mと非常に深い。土壌はほとんどなく、島にいつも生えている植物といえば、白樺やモミの木の森が数カ所、多くのコケや地衣類、さまざまな種類の亜寒帯の花、そしてベリー類がところどころに点在している。この島はまた、ケワタガモとカモメの避難所となっている。着岸できる場所はいくつかあるが、風の状態によって左右されるうえに、上陸が困難な場合もある。電気と飲み水は一切なく、小家が1軒だけある。
6月から7月の間の天候は、とても不安定で変化しやすい。この時期の平均気温は16.5度、最高気温は20度で、最低気温は10度まで達する。
統計的には3日おきに雨が降る。湿度は、60%から80%のあいだを揺れ動くが、50%以下になることはない。平均風速は、秒速4mから5m、均等に北寄りまたは南寄りの風が吹く。
この報告書に含まれる島の1枚目の地図には、アンテナの設置場所、霧のエリア、鏡とレンズ鏡やそのほかの活動の位置が詳しく掲載されている。2枚目の地図には、ダラーロからクナーヴェルシェア島へのルート、3枚目にはダラーロとストックホルムからのルートが載っている。
Ⅳ. TECHNOLOGIES INVOLVED 用いられるテクノロジー
Sound System. サウンド・システム
8本のサウンド・ビームと14本のサウンド・スローは、10ヵ所のケーブルエリアにおける30本のアンテナを必要とする(アンテナ:3m型が13本、2m型が13本、1m型が3本)。これらのアンテナは、スウェーデン・テレコム(Telewerket)によって、このプロジェクト用に寄付された。さらに、スピーカー用のドライバーが30個、カートリッジ・テープ・デッキが22個、そしてアンプが30個必要である。システムは電波信号によってオンオフの切り替えができる。1日の総電力使用は、15キロワット/時であると予想される。
Recording Sound Sources on the Island. 島の音源を録音する
90時間の録音された音源が必要であり、同じ音が繰り返されない4時間の録音が準備できれば理想的である。島の音は、冬と夏に録音するので、島を2回訪れる必要がある。またスウェーデン国防省研究所の協力によって水中の音の録音も行なう。仕事を終わらせるまでにかかる時間は風と天候しだいであるが、音源をすべて録音するには2ヶ月はかかると思われる。
Fog System. 霧のシステム
霧は、風圧500psiの噴射システムによって作り出される。9つの場所で必要な噴射ノズルは次のとおり:Fog Valley(霧の谷)150個、Fog Geyeser(霧の間欠泉)100個、Cloud Lake(雲の湖)60個、Mist Fall(霧の滝)60個、Fog Grove(霧の茂み)60個、Fog River(霧の川)60個、Fog Forest(霧の森)100個、Fog Cove(霧の入り江)150個、Fog Hollow(霧のくぼ地)60個で、合計800個のノズルとなる。800個のノズルを30㎝の間隔をあけて設置するには、240mのパイプが必要である。このシステムは、海水を使い、ポンプの最も効率的な使用ができるように設計される。必要な水の全体量は1分間におよそ160ガロンであるため、システムの実行時間が平均10時間だとすれば、1日90,000Lの水を要する。1日に必要な電力は14キロワット/時である。
Construction, Rigging and Mounting. 設置作業
必要なことは次のとおり:アンテナとドライバーが風で動いたり、サウンド・ビームがずれたりしないように固定する。電子機器、鏡、吊り上げロープ用に耐候性のある覆い、そして霧を作り出すポンプ・システム用の覆いが必要となる。
Mirrors. 鏡
この島の条件に合う素材と制作方法を選ぶことが必要である。
Power. 電力
霧のシステムとサウンド・システムはどちらも島内に存在しない電力を要する。電力はバッテリーで、毎日充電する必要がある。
Recording the event. イベントの記録
10日間にわたるIsland Eye Island Earを、4チャンネルステレオで録音し、プロジェクトの映像記録を制作する予定である。
Logistics and support system ロジスティクスと支援システム
システムのモニタリング、作業する人たちとのコミュニケーション、協力者たちの仮設住宅などが含まれる。
V. CONDITION OF THE EVENT イベントの条件
Island Eye Island Earは、1975年7月に10日間にわたって行なわれ、毎日16時間訪問可能となる。訪問者は好きなときに出入りし、自由に島内を歩き回って、探検することができる。ダラーロもしくはストックホルムからプライベート・ボートかツアー・ボートで来る場合、クナーヴェルシェア島の北側にある小さなトコルナ島が主要な波止場になる。荷物の運搬ドックが、島の北端に建設され、訪問者を運ぶシャトル・ボートが、クナーヴェルシェア島とトコルナ島のあいだを行き来する。ダラーロとストックホルムからの観光旅行が企画される。
Ⅵ.TENTATIVE SCHEDULE. 仮スケジュール
仮スケジュールは以下のとおり:
1975年5月1日 ビリー・クルーヴァー、デーヴィッド・チュードア、中谷芙二子、ジャックリーヌ・モニエがスウェーデン入り。
6月25日~7月14日 クナーヴェルシェア島においてセットアップ作業
7月15日~29日 演奏
7月30日~8月5日 解体作業と片付け
Ⅵ.TENTATIVE BUDGET  仮予算 (1974年9月16日)   
アーティスト・フィー 16,000ドル
旅費 6000ドル
人件費(50人週) 15,000ドル
サウンド・システム(レンタル代と購入代:アンプ、ドライバー、テープレコーダー、ケーブル、テープ、電力供給、無線制御)15,000ドル
アンテナ設置 4,000ドル
霧システム(噴射ノズル、パイプ、ポンプ、電力供給、設置費)15,000ドル
凧 2,000ドル
マーガレッタ・アスバーグの活動費(鏡、望遠鏡、ロープ) 4,000ドル
宣伝、資金調達、ロジスティクス 10,000ドル
運営費と雑費 13,000ドル
合計 100,000ドル
1974年12月3日
(訳:中井悠)
#タイプ:アーカイブ資料
1974年7月 クナーヴェルシェア島を調査する。
2019年9月10日 クナーヴェルシェア島を再調査する。
#文書
#1974年